投稿日:2024/07/16
オークションサイト等で出品されている中古の車高調の中には「手で押して返ってくるのでダンパー生きてます」と書かれていることが多いですが、俗にいう「抜けてるダンパー=減衰がないダンパー」なのでしょうか?
そもそも人の手で押しただけでダンパーの良し悪しを判断することができるのでしょうか?
実際に検証します。
今回2種類のダンパーを用意しました。生きてるダンパーと
抜けてるダンパーとしてフリーピストン内のOリングをわざと傷つけます。
手で押したところ、生きてるダンパーは動きが硬く、抜けてるダンパーは軽く動くように感じました。
実際のダンパーテスターでの計測結果です。
赤:生きてるダンパー
青:抜けてるダンパー
1枚目は各速度の減衰力の最大値(エンジンで言うところのカタログ値。減衰の最大値が分かる)を繋げたグラフ。
一般的にダンパーの減衰力特性を表すのはこの形式のグラフです。
2本とも大きな違いはなく、減衰力の最大値もほぼ同じです。
2枚目は速度ごとの減衰力のグラフ(エンジンで言うところのシャシダイのパワーチェックグラフ。速度ごとで減衰の最大値までの特性が分かる)
1枚目のグラフと異なり大きな変化がありました。
一番の違いは右下、赤に対して青が凹んでしまっています。
ここはダンパーが縮みきったところから伸ばし始めた時の減衰力を表しています。
赤は少し動いた瞬間から減衰力が立ち上がってるのに対し、青では動き始めの減衰力が低く、ある程度動いてやっと減衰力が立ち上がっていることが分かります。
次に違うところは左上です。ここは伸びきったところから縮みはじめた時の減衰力です。
こちらも赤に対して青の減衰力の立ち上がりが低いことが分かります。
人間が手で押したときに感じた違いはグラフのここの差ということになります。
Oリングを傷つけたことでガスとオイルが混ざってしまい、ロッドの動きに対して減衰力の立ち上がりが低くなってしまったことが原因です。
上の2種類のグラフにはそれぞれ得意、不得意があります。
1枚目のグラフはダンパーのスピードごとの減衰力特性を見たり比較するのには便利なグラフです。
2枚目のグラフはダンパーの不具合を確認したり、ロッドの動き始めなどの細かな減衰力を比較する場合には便利です。
ダンパーを手で押して返ってくる=減衰が生きてる
必ずしもそうとは限りません。
むしろ簡単に手で押して返ってくるようなダンパーでは既に抜けてしまっている可能性が高いです。
特に、オフロードやストリート向けの車高調では減衰も低いので手で押しただけで判断するのは非常に難しいです。
~余談~
1番初めに登場したスルーロッドダンパーですが、ガス反力がゼロのため縮めてもロッドは伸びてこない不思議なダンパーです。
これは抜けているわけではなく、ロッドがストロークした分後ろから出っ張ってくる構造で、ピストンの上下面積が同じなのでロッドが伸びてこない(ガス反力がゼロ)という理屈です。
他にも純正ダンパーに多い複筒式などベースバルブで縮側の減衰力を出しているダンパーは必要なガス圧が低く、社外品に多い単筒式よりも伸びるスピードが遅くても正常である場合もあったりします。
皆さんも中古の車高調購入後はテスターにかけることをおすすめします。
アネブルYouTubeでダンパーの基礎的な説明動画上げてます。ぜひこちらもご覧ください。
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